再生型農業とは何か:入門(概要)
こうした課題への対応として登場したのが「再生型農業(Regenerative Agriculture:RegenAg)」です。これは単なる「持続可能な」農業にとどまりません。持続可能性が現状維持を意味することが多いのに対し、再生型農業は一歩進んで、生態系の回復と向上を目指します。同時に、現実的なアプローチでもあり、生産性の維持または向上を重視しています。
成果重視のアプローチ
有機農業が投入資材の制限(合成肥料や農薬、遺伝子組換え作物の不使用)によって定義されるのに対し、再生型農業はその「成果」によって定義されます。目標は、健全な土壌を育み、生物多様性を向上させ、炭素を土壌に固定し、水の利用効率を高めることです。さらに、農場が収益性と生産性を維持できることも重要です。 この柔軟性により、多様な実践やイノベーションが可能になります。農家やアグリテック企業は、核心的な成果を達成する限り、さまざまな手法を試すことができます。例えば、持続可能な開発のための世界経済人会議(WBCSD)は再生型農業を「土壌の健全性を育み回復させ、気候、水資源、生物多様性を守りながら、農場の生産性と収益性を高める成果重視の食料生産システム」と定義しています。
5つの基本原則
再生型農業は農場ごとに異なる形を取りますが、共通して重要とされる原則があります。代表的なコミュニティであるGroundswellは、次の5つを基盤としています。
- 土壌をかき乱さない:耕起を最小限に抑え、土壌の生物や構造を破壊する行為を避ける
- 土壌を被覆する:カバークロップや作物残渣により、侵食や極端な気象から守る
- 生きた根を保つ:根は微生物に栄養を与え、土壌生態系を安定させる
- 多様な作物を育てる:輪作、間作、被覆作物などで土壌の回復力や害虫耐性を高める
- 放牧動物を統合する:管理された放牧により養分循環を促し、土壌の再生を助ける
これらは一見シンプルですが、組み合わせることで健全な土壌の基盤が築かれます。そして健全な土壌こそが、強靭で生産性の高い農業の鍵となります。
なぜ再生型農業が必要なのか?
現在、農業は世界の温室効果ガス排出の約25%を占め、淡水利用の約70%を消費しています。持続不可能な農業慣行は、環境だけでなく長期的な食料安全保障をも脅かしています。収量重視で育種された単一栽培(モノカルチャー)は回復力に乏しく、多量の肥料や農薬に依存し、気候ストレスにも弱い傾向があります。
再生型農業は、土壌の生物学的機能と生態系の健全性を改善することで、環境負荷を軽減し、収量の安定化とリスク低減を実現する手段となります。
業界の関心
再生型農業は、農業バリューチェーン全体で注目を集めています。食品企業は気候戦略の一環として再生型調達を検討しており、アグリテック企業はバイオスティミュラントや生物由来資材、精密技術への投資を拡大しています。また、大手金融機関も農家の移行を支援するプログラムに資金提供を始めています。 課題は残っていますが、確実に勢いは広がっています。
なぜ私たちはこれらに関心を持つのか?
再生型農業の変革の多くは農業実践の改善によって実現されると認識しつつも、私たちは生物資材やバイオスティミュラント、新しい精密な散布剤や種子処理などのイノベーションが、この移行を支える重要な役割を果たすと強く考えています。 これらの革新的技術については、次回のブログやホワイトペーパー「再生型農業:自然生態系を改善し収量を高める方法」で詳しく紹介しています。

